ためらうよりも、早く。
傍らに置いてあったビジネス・バッグを持つと、水の入ったグラスを傾ける男を見つめた。
「ご馳走さま、で良いわよね?」
敢えて尋ねたのは、この場を離れる時間を延ばしたかったからなのか。もう自分でも分からない。
「誰に聞いてんの?」
「……元・風船男よ」
だけれど、これで勝負あり。
呆気ない幕切れには、微笑を見せるのがちょうど良い。
せめて添い遂げる子だけは悲しまず、この面倒な男と幸せになって欲しいと願いながら……。
「ついに風船から卒業させて貰えた?」
「そうね。結婚した時……、その時は仕方がないから認めてあげる。
あくまで仮よ?すべては風船男次第ね」
「さすが柚希は手厳しい」
「甘やかして何になるの?」
なおかつ強気な女のイメージは崩さず、淡々とこの場を楽しむわ。……これが最後の2人きりの時間だもの。