ためらうよりも、早く。


傍らに置いてあったビジネス・バッグを持つと、水の入ったグラスを傾ける男を見つめた。



「ご馳走さま、で良いわよね?」

敢えて尋ねたのは、この場を離れる時間を延ばしたかったからなのか。もう自分でも分からない。


「誰に聞いてんの?」


「……元・風船男よ」


だけれど、これで勝負あり。


呆気ない幕切れには、微笑を見せるのがちょうど良い。



せめて添い遂げる子だけは悲しまず、この面倒な男と幸せになって欲しいと願いながら……。



「ついに風船から卒業させて貰えた?」


「そうね。結婚した時……、その時は仕方がないから認めてあげる。
あくまで仮よ?すべては風船男次第ね」


「さすが柚希は手厳しい」

「甘やかして何になるの?」


なおかつ強気な女のイメージは崩さず、淡々とこの場を楽しむわ。……これが最後の2人きりの時間だもの。


< 122 / 208 >

この作品をシェア

pagetop