ためらうよりも、早く。
そんな姉のぞんざいな態度に、クロワッサンを完食した妹はキッと鋭い眼差しを向けたが。
「ちーがーうー。ああ見えて優しいんだよ?……たまには。
10日後が私たちの付き合い始めた日だし、入籍もその日にしたの。タイミング良かったよねー」
最後には、あははと暢気に笑う彼女にひそかに溜め息を吐いた。
そう、当人だけが全く気がついていないのだ。——策略家な尭の、のん包囲網と緻密な計画を。
もちろんそんな姉の考えさえ読めるはずもなく、彼女の口は開いたら止まらない。
「でね、今のうちに“家族孝行”してるの。ほら、私がいなくなると皆さみしいでしょ?
尭くんも賛成してくれたし、満喫したいの。もちろん、ママからお料理も学ぼうかなぁって……」
「そもそもアンタは料理自体が苦手でしょうが。
殊勝な考えを持っているなら、あと残り9日、朝5時からママの支度の手伝いをお勧めするわ」
「柚ちゃんには一番言われたくないよ。私、人並み以下だけど、料理は出来るよ?
紅茶とかコーヒーだって淹れると、パパは褒めてくれるもん。
柚ちゃんなんて、目玉焼きを焦げ焦げにしてるじゃん。その目玉焼きだって、卵を割るのを失敗した時は、炒り卵に変更したって見苦しい言い訳するしぃ」