ためらうよりも、早く。


「私が本気になれば料理なんて簡単よ。
必要に駆られたことがナイから、今まで真剣に取り組んでいないだけ」


「よく言うー。ママの料理恋しさに実家に戻ってるクセに」


ダメ押し発言でピクリと眉根が動いたが、こんなことで怒るほど子供ではないと笑ってみせた。



「私を誰だと思ってるの?」

「えー……、美人で賢くて強い柚ちゃんです」


何より、私が微笑は威圧感たっぷりで怖いと定評があるのも承知のうえだ。それは彼女も然り。


「よろしい」ともう少し口角を上げて返すと、助かったと言わんばかりにホッと息を吐いている。


騙されやすいところは昔から変わらず。自慢の妹は今日も可愛い、と考えているとも知らずに。



幾つになっても無邪気に明るい貴女は、人を思いやるばかりにその心がすぐに曇ってしまう。


だから、昨日の一件を含めてもう何も言わない。祐史を嫌うような言動だって、もうしない。



……時すでに遅しな状況で見合いの件を話したのも、そのせいだった。


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