ためらうよりも、早く。


わがままを乞えるのならば。——これからも祐史と、昔馴染みとして仲良くあって欲しい。



大人になるほど、利害なしの友人関係を築けるのは稀なこと。アイツも尭にしても、知己を得るのは簡単ではない。


まして人の上に立てば、本音を晒せる相手も極端に少なくなる。だから、私が抜けても続いて欲しいと思う。


フッと緩みかけた頬を慌てて引き締めると、あたたかいココアを飲む妹から視線を逸らす。



さよならって、風船男に言わなくて良かった。尭やのんを巻き込んで亀裂が入るところだったわ。



「朝イチで会議があるから20分以内にここを出るからね。それまでに準備頼むわよ?」

「おっけー」

「引き継ぎ業務も無理は禁物よ?
いざとなれば、尭をあごで使いなさい。——ヤツの責任でもあるんだから」

「あはは、そうしよっかなぁ」

「私は本気で言ってるから、遠慮なんかいらないわよ?——尭を嬲り倒しなさい」

「ちょ、柚ちゃん怖いから……!」

「そう?——尭に報復する場合、のんを介した方が手早いのよ」

「なにそれー」

暢気な声でグレープフルーツを食べ始めた彼女を残し、私は席を立ってリビングをあとにした。


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