ためらうよりも、早く。
同族会社ゆえ、社内で構うことなく彼女を怒れるのは彼のみ。——のんの真のナイトには、敢えてヒール役になって貰った。
のんには今後も秘密事項だが、「あー、ねむ……」とあくびをするこの男は、寛大な心で彼女を様々なものから守ってくれているのだ。
「代わりに飛行機乗ったら?目覚めるわよ?」
「それがヤだから、別のMDに振ったんですよ」
「じゃあ私が振ってあげようかしら」
こうして珍しくふたりで社内で顔を合わせた時は、やっぱり気が抜けるの致し方ない。これぞ息抜きという名の情報交換タイム。
相手の腹を探る必要もなく、本音まで晒せる唯一無二の存在がいるという心強さ。――これに感謝するのも多分、同族企業の内情を知っているから。
……まあ可愛い妹とは違って、私たちはドウデモイイ小言でブレるような優しい人格ではないのは確かだけれど。
「……で、柚希さん大丈夫ですか?」
「え?なによ尭。アナタ、パパのご機嫌取りに転じたわけ?」
「そんなものに縋るほど無能じゃありません」