ためらうよりも、早く。
「へぇ、言うようになったわね」
「——柚希さんの結婚話から飛び火したせいで、朝一番に社長に説教をくらっても平気なくらいには」
私が逃亡(出社)したあと、朝のひと悶着により父に呼び出されて口撃にあった模様。結果、見事に2人で遅刻したという男が笑っている。
相変わらずオシャレなスーツと小物類を身につけ、一切の隙も見せないクールさは昔と変わらず。
——同じ属性のドSな私からすれば、その仮面を取っ払ってやりたくなるのも仕方ない。
ただ、彼のメガネの奥の瞳には、私が勝手に暴露したという怨念が込められているようにも映るが、これもいつものこと。
「可愛い妹の一大事だもの、私なりの援護よ。いけない?」
知り尽くした間柄では嫌味は華麗にスルーが当たり前だし、細々と問題に構ってしまうような性質では会社の役員など務まらない。
「まあ、望未が口を滑らすよりマシですね」