ためらうよりも、早く。
そんな法律いつ出来た?……おまけに、昔馴染みの男たちは、揃って人の腕を掴むのが趣味らしい。
チッと舌打ちこそしたが、押し問答になるのは明白なため、諦めて隣のスペースに腰を下ろした。
「何で俺は着信拒否にされてんの?
それに結婚を決めたって、どういう心境の変化かと思って」
ひたすら目を合わせないように、磨き上げられた一面ガラスをぼんやり眺めてやり過ごすつもりだった。
しかし、初っ端のストレートな物言いによってそれも許されず、遠くに向けた筈の視線は徐々に落ちていく。
視界に入ってくるのは、ぎゅっと握っていたらしい赤みを帯びた自らの手。けれども、ここで泣くなんてアリエナイ。
気合いで顔を上げた私は、すぐさま隣に狙いを定める。その刹那、目を細めてこちらを見るその瞳は漆黒に染まっていた。
「……こんな時間に態々そんなこと聞きに来たの?
何より、尭っていう大事な切り札をこんな場面で使うのは血迷ったとしか言えない。尭がただただ可哀想ね。
もっとも、私はアンタと生産性のないやり取りをする暇はないのよ!」