ためらうよりも、早く。
そもそもの話、この男が多忙すぎることくらいよく知っている。
国内にいれば社長に仕える日常。国外に出た時は、東条グループの経営補佐として、ここでも裏から社長をサポートしているのだから。
社長の後ろ盾でありながら、何かあれば真っ先に動く——端から見れば損な役割に映るだろう。
祐史ほどの能力と人脈をもってすれば、会社を興すことも叶う。そう、トップに立てるはずだと。
それでも、この男にそんな考えはさらさら無い。あったら東条グループに入社していないだろう。
ちなみに東条グループで上り詰めることは目論んでいるらしいが、それもこれも東条社長のため。
「俺は二番手でちょうど良いんだ。そもそもトップに最も必要な資質もないし。
社長の器は拓海だからこそある。——それを支える役目も結構楽しいもんだ」
いつかの飲み会で軽い調子で答えたものの、あれが祐史の核心に一番触れていたと私は思う。