ためらうよりも、早く。
今の立場にも、不平不満は決して言わない。たとえ何かを口にしてもそれは、冗談という証拠。
実際は東条社長と蘭さんを守るために自分がある、と使命感に満ちているように映るのだけれど。
常人では理解に苦しむだろう。だが祐史は、いつだって誰かのために動いてきた人間である。
但し、それは心から信頼する相手に限ってのこと。まさに、勧善懲悪を地でいく男なのだ。
そう、一度大切なものと認識してしまったら、どこまでも惜しみない友愛を注いでくれる。
最早、相手のことなどお構いなし。——そんな義務感や正義感なんて、私はイラナイ。
「……な、んで、きたのよ、っ」
あ、と思った時にはもう遅い。それまで耐えてきた涙腺が緩み、生ぬるいひと筋のものが頬を伝っていた。