ためらうよりも、早く。
これはもちろん隣の男に向けての発言であるが、言える立場にないのは百も承知だ。
人前でチッと舌打ちするのは、はしたなさ満点の私だから許される行為。——女が苛立って何が悪い、と。
このイビツな難局を乗り切らねば、と考えていたのはお互い様だった。けれどこの際、言わせて貰うわ。
「予め、私の不手際は謝罪させて。——まるで女の武器みたいに泣いて、……反省してるわ。
でもね、こんな結果を生む前にアンタはここに来る必要があったの?
ドウデモイイ理由なんて探るよりもまず、それぞれ大切にすべきものがある。分かるでしょう?」
こちらを相変わらず見ようとしない男に対し、淡々とした声音で問い重ねていく。
あくまで無言を貫き通すつもりらしいが、端正な横顔には焦りの色が滲んでいた。
悲しいことだが、大人の階段を上っていくほど、執着心に醜さを孕んでしまう。
失いたくないという幼心はそのままに、その後を打算的に考えて精査するのが身勝手なところ。
この関係が“また”途切れることを恐れるのも、それと同じ。——子どもよりもはるかに厄介だ。