ためらうよりも、早く。


「……は?」

間の抜けた声とともに、ぽかん、としているのは想定外ゆえ。



ぽつり静寂の専務室に響いたひとつの低い声。真っ暗な色をした瞳から感じる強さ。


あれほど呼び掛けてきたにもかかわらず、このタイミングでその発言の真意を探れというのか。


交錯する思考から弛みかけの表情を戻し、自分勝手な目の前の男を見返した。


すると、いつもとは真逆の真剣な面持ちをした祐史の唇が、再び小さく動いた。



「もうやめよう」と、再び腑に落ちないひとつのフレーズを。


「な、何なの?」



「分かるだろ?——昔馴染みのカテゴライズ」


気障とも取れる自嘲笑いを浮かべながら静かに告げられたのは、さよならの宣告だった。


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