ためらうよりも、早く。
歯列をなぞられ、ぶるりと背筋に走る甘い疼き。
咥内から無理やりに引き出される熱と唾液が零れ落ちていくほど、心は虚しく冷えていった。
これ以上は止めて欲しい、と舌先を引っ込めて牽制するも、あっさりと搦め捕られてしまう。
そんな身勝手男を大切なルブタンのヒールで踏んづけるのは勿体なくて、私はされるがままの道を選んでしまった。
呼吸が荒くなり始めると今度は耳へと唇を移し、ダイヤの一粒ピアスをつけた周辺を舐め回すように弄ぶ。
真っ黒な瞳は生理的な涙が溢れてくる私を見下ろし、その嘘吐きな唇を寄せてくる。——これがどれほど惨い行為と分かっていながら。
けれども過去に打ち勝てず、「や、めてっ」と負けのフレーズを紡いでしまった。
「——俺の言った意味がまるで分かってない」