ためらうよりも、早く。
泣くことも、苛立つことも忘れたのは多分、ヤツの能天気さに呆れているからだろう。
ふぅ、と夜の帳に落ちたひとつの溜め息。それが耳に届いた私は、口を閉ざして待つことにした。
「……むかしむかし、東京のあるところに近所に住む昔馴染みという間柄で、大変に仲の良い子どもたちがいました。
成長するにつれ、互いの中にあるこの感情が友達に抱くものではなく、愛だと気づいた2人の男女は気持ちを確かめ合い、晴れて恋人同士になりました。
大好きな女の子と付き合えることに浮かれたその少年は、大好きでしょうがない彼女を早く自分だけのモノにしたいと、早々に欲任せの初体験を成し得てしまったのです」
「ちょっと……!」
勢いよく立ち上がった私は、ずかずかと減らず口を叩く男の元に向かう。
もちろん冒頭の部分ですぐ、誰のことを話しているのか分かっていた。
我ながらよくここまで我慢したと思うが、さすがに琴線に触れる話には堪えられる訳もない。