ためらうよりも、早く。
目の前で仁王立ちすると、おもむろに顔を上げた祐史。その黒い瞳は固い意思を秘めており、何も言えなくなってしまう。
すると前から手を引かれ、隣に座るように目で促してきた。……これ私のデスクだっての、という言葉は呑み込んだ。
しかし、このままでは埒が明かない。諦めて無言で一歩踏み出すと、デスクにお尻をつける。
そのまま隣で佇む男に視線を投げ掛けるが、覗く横顔に急かすのは憚られた。
仕方ない、と正面に目を向けたその刹那、指と指の間をキュッと搦め捕られる。
虚を衝かれて視線を戻せば、どこか弱さを漂わせた眼差しで私を見つめている祐史と目が合う。
自ずと口を開きかけた時、私の唇に触れる骨ばった指先に目を見張った。同時に、シーっと押し殺した声が耳に届く。
懐かしさを覚えるのも無理はない。——小さな頃、『内緒だよ』の代わりにお互いにコレをし合っていたのだから。
それでいて、“まだ何も言うな”とその眼差しに訴えられては、いつもの調子でいられなくなるというのに。