ためらうよりも、早く。


約束の締めはほっぺにチューするのがお約束だった幼い頃。頬に唇を当てたあとは最後に、えへへと顔を見合わせて笑っていた。


あのまま、無邪気に過ごしていられたらと自嘲する。何の柵もない仲良しこよしでいた時間は、いま思えば一番幸せだったから。


その後、淡い恋心に何も見えなくなり、一歩踏み出したのが間違いだったと気づくまでは。……なんて、遅い後悔が押し寄せて止まらない。



「——でも、その直後に気づいてしまったのです。
ガキだった男は性の誘惑や独占欲、醜い嫉妬などあらゆるものに負けて、当初に誓ったはずの約束を簡単に反故にしたことに……。
そんな負い目から、次第に彼女と付き合える幸せや嬉しさ以上に、取り返しのつかないことをしたという後悔に苛まれていきます。
ならばその贖罪も丸ごと含めて、大好きな彼女のことをもっともっと大切に守っていけば良かったというのに。
救いようのないバカで腑抜けな少年がそんな考えに辿り着けるわけもなく、元々なかった余裕はついに皆無となりました。
それどころか、非常に疎かなことに、罪悪感から本音とは真逆の言葉を武器に、何よりも大事な彼女をひどく傷つけてしまったのです」


私は衝撃的な言葉の往来に瞠目しながら、淡々と語る祐史の横顔をただ見つめていた。


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