ためらうよりも、早く。
「“昔馴染みの方が良かった”なんて、まっぴらな嘘。言った直後に、しまったと気づいても後の祭りです。
戻れることならガキの元に行って一発ぶん殴ってやりたいほど、あまりに愚かで卑劣なひと言を投げたのですから。
だというのに、彼女は一切ガキを咎めようとはしませんでした。ジッと涙を堪えて微笑むあの顔は今でも忘れられません。
初めてを奪ったというのに、謝らなかったガキは最低以外の何者でもありません。
こうして、経験と思いやりのなさでボタンを掛け違えた初めての恋は、あまりに早い終わりの時を迎えてしまいました。
しかし、問題がひとつ。そう、彼らは昔馴染みという間柄です。これは彼氏彼女でなくなっても、変わらない唯一のものでした」
確かに、私の“初めて”はこの男のもの。しかし、今となってはソレだけのことで。個人的には別段、重要視するものではないのだ。
それに何より、私は別のことに囚われていた。——祐史もまた同じように、この間柄——昔馴染みの柵に苦しんでいたのか、と。
上手く整理出来ない中でも一言一句、聞き漏らすことのないよう耳を傾けることに必死な私がいた。
隣の男を見つめていたつもりが、ふと真っ黒な瞳に映る自身の顔に気づく。
気を回せなかったせいでひどく憔悴した面持ちをしており、思わず苦笑を浮かべてしまった。