ためらうよりも、早く。
にまにまと薄気味悪い笑みを浮かべながら、発言はどうしてか核心を突いてくる。
尭に感化されたのかと小さく溜め息を吐く私に、今は姉の威厳も何もないだろう。
おまけに今日流した涙は何だったのかと自問するほど平常心に戻っていても、勝気な彼女に返す言葉が見当たらない。
そういえば。近い未来の義弟が、のんと付き合い始めた頃に言っていたことを思い出す。
望未はオンナの勘が突然働くうえ、色気を無駄に振りまく時がある。そのせいで、どうしようもない男を引っ掛けるのだと。
そう言った張本人こそ、どうしようもない男の筆頭格だが。……尭のヤツ、明日覚えてろ。
「ゆーくんとケンカしたの?」
挙げ句の果てにこれだ。天然には悪気がないものの、容赦ない踏み込みは勘弁して貰いたい。
頭を抱えたい気分でへこんだ缶をテーブルに置くが、のんの双眸は私の動向をジッと捉えて離さない。
さらに、「柚ちゃん」と怒ったように呼んで答えを急かしてくる。
「はいはい、いつも通りよ。ケンカなんてしてないわ。
でも、今後は会わなくなるでしょうね。――結婚する男に用はないの」
「……え?」