ためらうよりも、早く。


ちなみに、学生時代は勉学に勤しんではいたので成績は常にトップクラスをキープしていた。その一方で、躍起になって、男という存在を追い求めた理由は、自分が一番よく分かってる。


誰でもいいから、あんなヤツとの苦々しい思い出をかき消して欲しかったのだ。



様々な男と時を重ねるうちに、相性が悪かった初恋の一件は消化していたはずだった。


でも、祐史となし崩し的にしてしまった2度目のセックスがすべての間違い。


塞き止めてきた過去の感情。それをヤツの極甘な囁きが、まるで呪文のようにあっさりと引きずり出したのだから。


おまけに、数多の男たちとのエクスタシー記録まで、風船男のエロ具合に上書き保存された結果、今後セフレで満足出来そうにない。


こうして抜け殻状態にしたところで、結婚報告のためだけに福岡に現れた“クセ者”(東条社長いわく)の本心なんて知る勇気もないわ。


しかも、遊び果てても本命がいる。……人生は勝者に順当なレールを用意しているとは、本当に合理的だと思う。



「ふふ、祝儀の準備しておかなきゃね。
私はヤツから回収出来ないから、のんの祝儀に上乗せするように言っておくわ」

「柚ちゃん……」


「それで終わりね」

何事も笑顔で包み隠すのがベター。それに慣れきった大人なんて、本当に煩わしい生き物だ。


でも、これが正しい。――ここで祐史を好きだと肯定しても、何の解決にもならないから。


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