【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
「エリ………ちゃん」
「惜しいっ、いや、けど、いいか!うん
じゃあ私はフーちゃんって呼んであげるね」
「ふ、ふー?」
「冬でしょ、名前
フーちゃん冬生まれ?」
「12月生まれだけど」
「やっぱり、うん、なんとなく冬っぽいと思ってたんだよな」
七瀬さん…改め、エリちゃんは
陽気に笑いながら私のあだ名を連呼した。
私も愛想笑いで対応する。
エリちゃんのようにいつでも笑顔で明るくは居られない。
どうしても頭を離れないのは
キノのことだ。
キノの様態も気になるし
ちゃんと目を覚ましてるかも気になる。
問題はないらしいけれど
私にとって問題なのは本当のところそっちじゃなくて
次に会ったとき
どんな対応をすればいいのかだった。
「フーちゃん課題終わった?」
「昨日無理やり終わらした」
「じゃーさ、明日出掛けようよ
で、お話しよ!
そうだ、カラオケ行こう!」
「え、え、あ、カラオケ?」
「決まり!いいでしょ?」
エリちゃんの意図は全く見えないけれど
決して適当に言い出したことではないことはそれとなくわかる。
たぶん私を気遣っている
悩みを聞いてくれようとしている。
本当に
有りがたいと思った。
「…うん、ありがとう」
「ありがとう?
あ、じゃあ明日10時ごろに駅前のカラオケで、」
私とエリちゃんの
初めてのお出かけの予定が決まった。