恋のカルテ
先生はそろりと片方の手を伸ばし、リモコンを掴むと電源をオフにした。そして、まるで呟くように言う。
「命は救えばいいってもんじゃない」
「どうしてですか?」
私は先生の胸に埋もれた顔を持ち上げると、先生の顔を見上げた。先生の目がうるんで見えたのは私の見間違いだったろうか。
「どうしてかって?」
先生は私を抱きしめていた手を緩めるとそっと目を伏せる。
「はい。だって先生は救急医で、それに医者は誰もが人の命を救うために存在しているんだと思うから……私には先生がどうしてそんなことを言うのかが分かりません」
「そうだな、お前は正しいよ。でもいつか分かる」
答えはくれなかった。自分で探せということだろう。
「そうですか。いつか。……じゃあ、そろそろご飯にしますからその手、離してもらえます?」
「やだ。せっかくだからこのままベッド行こうよ」
「だめです。お弁当作りませんよ」
「それとこれとは別問題だろ?」
「いーえ、同じです」
渋々手を離した先生から逃げ出すと、私は夕食の準備をするためにキッチンへ向かった。