恋のカルテ

その日、私は研修室のパソコンで病院のグループウエア―を開いて悪戦苦闘していた。

出退勤や休暇の届け出、レポートの提出なんかもここからできると聞いていた。でも、説明だけで実際の使い方までは教えてもらわなかった。

メールのマークをクリックし、アドレスを検索すると院内メールで使用できるアドレスがずらりと表示される。そこから佐伯先生のものを探し出し、どうにか宛先まで入力することが出来た。

「なにしてんの、高原さん」

いきなり森くんに声をかけられて、ビクリと肩を震わせる。決して悪いことをしているわけじゃないのに、びくつく自分が悲しい。

「メールを送ろうと思って」

「誰に? 何のメール?」

そう来ると思った。だって、森くんだもの。

「えっと、来週からお世話になる指導医の先生に、後でご挨拶に伺いますってメール」

「……へえ。内科の指導医、五十嵐先生だっけ」

咄嗟に出た嘘に、森くんは疑う様子もない。

「そうそう、五十嵐先生」

「でも、そんなこと必要?」

「ひ、必要でしょ。大津さんもするって言ってたよ」

これは本当のこと。挨拶はしつこいくらいしておいたほうがいいと大津さんが言っていた。さすが体育会系の病院といわれるだけはある。挨拶は重要。

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