恋のカルテ
圭人と別れたことはいつか話すとしても、佐伯先生とのことは秘密のままにするつもりでいる。
「まあさ、その彼に俺らの仕事を理解しろって方が無理なんだよ」
「そうなのかな」
「そうそう。俺が普通の会社員だったら女医なんて雲の上の存在って言うか、手が出せないって言うか。そもそも始めから選ばないけどね。彼女が自分よりハイスペックなんてプライドが許さない。……とまあ、それは男にもよるけど。君たちさ、これからも付き合っていけるの?」
「どうだろうね」
私の答えに森くんは首を捻る。
「……え、否定しないの? 怒らないの? 俺、結構酷いこと言ったよ」
「うん。だって当たってるから」
当たってる。圭人は医者になった私が遠くに感じると言っていた。私は私で圭人は圭人。何も変わらないと思っていたけど、圭人は違ってたのかな。応援してくれていると思ってたのに、心のどこかでは今の森くんが言ったみたいなことを考えてたんだろう。
こんなことになるなら、看護師にでもなればよかった。それでも実家の両親を支えることが出来て、病院のために働けた。でも、もう遅いよ。後戻りできない。
「……高原さん? どうしたの急に黙って。具合でも悪い?」
「ううん、なんでもない。ありがと、森くん」
「え……、なに? なんで?」
想像でしかないけど、多分それだ。私がフラれた理由。