恋のカルテ
病棟につくと忙しそうにしている看護師に思い切って声をかけ、山田さんの受け持ちが誰かを教えてもらった。
それと、受け持ち看護師はカルテに名前が載っていることと、受け持ちが夜勤や休日の場合は誰が見ているのか分かる一覧表があることも教えてもらうことが出来た。
これで明日から、仕事がしやすくなるだろう。
「……さてと、八木さんはどこにいるんだろう」
私はナースステーション内を見渡した。
「あ……、いた」
見つけることが出来たけれど、とても怖そうな人だ。ショートヘア=バリキャリのイメージ通り、意志の強そうな目。そしてしゃんと伸びた背筋が近寄りがたい雰囲気を醸し出している。
私はしばらくパソコンに向かっている八木さんを遠目から見ていたけれど、これでは埒が明かないと思い切って声をかけることにした。
「あの、すみません」
「少し待ってください」
こちらを見ようともせずそう返され、私はその場で待つことしかできなかった。
まるで叱られて立たされているみたい。すぐ傍にあるイスは空いているけれど、座ってしまうのも気が引けて、私は彼女の手元をみつめながら作業の終了を待った。
八木さんは電子カルテに看護記録を打ち込んでいる最中のようで、細くてきれいな指先は無駄のない動きでキーボードをはじく。ようやく終了かといったところでナースコールで呼ばれてナースステーションを出て行ってしまった。