恋のカルテ
しばらくして戻ってきた八木さんは、私に声をかける。
「ごめんなさいね、えーと……」
「高原です。本日からお世話になっている研修医です」
「ああ、はいはい。で、ご用件は?」
八木さんはもといた場所に座ると、私にも座るように促した。
「あ、はい。あのですね、患者の山田さんの事を教えていただけたらと思って」
「先生が担当?」
「そうなんです。でも、全く受け入れてもらえなくて」
「でしょうね」
八木さんは言いながら電子カルテを開く。
「山田さんはもともと他院から紹介されてきているんですけど、その時に持参された診療情報提供書は見ました?」
診療情報提供書とは、病院を移る際に患者本人の病気についてや、それに対してどのような治療をしてきたかなどが書かれた医師から医師への手紙で、検査データやレントゲンなどの画像もCDRなどで提供されることもある。
私は山田さんの入院してからの記録は始めから目を通したが、外来のしかも初診時の記録までは読んでいなかった。