恋のカルテ
「私の病気、良くなると思う?」
「良くなると言うのは、完治……ということですか?」
「そうよ」
彼女は末期がんだ。完治する見込みはないと告知も受けているはず。それなのにどうしてこんなことを聞いてくるのだろう。
もしかして、私に答えさせて、その答えが意に副わないものだったら、もうここへは来るなというつもりなんだろうか。
はじめから私を拒んだ人だもの、十分考えられることだ。
「五十嵐先生の診断の通りだと思います」
私は当たり障りのない言葉を選んだ。すると山田さんは小さなため息とともに笑った。
「そうね。先生はこの分野の権威だものみんなそういうの。でもそんな答えは求めていないわ。私はあなたの意見を聞いているのよ」
「私の意見、ですか?」
「そうよ、あなたの意見が聞きたいの」
山田さんは私を真っ直ぐに見ていった。彼女の目は真剣だった。答えさせて試そうとか、貶めようとかそんな意図は微塵も感じられない。
それなら自分の思いを正直に伝えるのもいいかもしれない。そう思った。