恋のカルテ
「何を勘違いしてるんだ」
「勘違い? でもさっき残念だっておっしゃったから」
「残念なのは患者の思いに気付けなかった私の方だよ。でも、報告はするべきだった。それは肝に銘じておくといい」
「じゃあ、許していただけるんですか?」
「もちろんだ。この程度のことで首にしたいたら、佐伯なんてとっくの昔に首になっている」
「佐伯先生が?」
隣にいる佐伯先生を見ると、苦笑いを浮かべている。
「こいつ、研修医のころは今以上に問題児だったから。よく説教した後家に呼んで、飯食わせてやったもんだ。なあ、佐伯」
全然知らなかったけれど、五十嵐先生は佐伯先生の指導医でもあったんだ。
「……二人とも、夕飯は?」
「まだですが、でもお邪魔した上にご馳走にはなれません」
「いいから食べていきなさい。なあ、佐伯」
「はい、喜んで」
遠慮のない先生を見て五十嵐先生はほほ笑む。そして奥様に声をかける。
奥の部屋から出てきた奥様は、とても綺麗な人だった。
「あら、佐伯先生……と、どなたかしら?」
「初めまして、高原と申します。五十嵐先生にご指導いただいている研修医です」
「初めまして。ゆっくりしてらして」
「ありがとうございます」
早速料理に取り掛かる奥様を私も手伝わせてもらった。とても手際が良く、あっという間においしそうな料理が出来上がっていく。