恋のカルテ
これじゃ、離れられない。
この手をムリに引き離したら起こしてしまうかもしれないし。
私は仕方なくベッドの端に腰を下ろす。すると先生の顔が微かに緩んだ気がした。
「……もしかして、起きてます?」
問いかけてみたけれど、返事はなかった。
「まるで子供みたいですね、先生」
いいながら私は先生の体を布団越しにトントン叩く。
私の母はよくこうしてくれた。
忙しい人だったから、私の体調が悪い時ぐらいしか傍にいてもらえなかったけれど、とても安心できたのを覚えている。
先生は、どんな幼少期を過ごしてきたんだろう。
先生のお母様は継母で、愛情を注がない人だったといっていた。
実母の話は聞けなかったから分からないけど、家族を持つことに憧れがなくて、だから結婚につながる恋愛はしない――そう言い切っていたっけ。
その時の先生はとても寂しそうに見えたから、私は家族の素晴らしさを証明して見せるだなんていったけど、先生はそんなの必要ないと跳ねのけた。
先生はこれからずっとひとりでいるつもりなんだろうか。
私がここを出ても、遊ぶだけの女性は沢山いる。仕事もお金もある。けれど、それだけが先生の幸せだとは思えない。
だからって、私にはどうすることも出来ないのだけれど。