恋のカルテ

 先生の熱は翌日まで尾を引いた。

それでも座薬で熱を下げて、仕事に行くと言う。心配する私をよそに先生は着替えをすませ、車のキーを手に取った。

「もう出れるか? なら乗せてくぞ」

「あ、はい。出ます」

私は有り合わせで作ったお弁当を二つ紙袋に入れると、慌てて先生の背中を追う。

「体、本当に大丈夫なんですか?」

「まあね。座薬が効いて体が楽になったよ。それに、仕事をしないと禁断症状が出るからそっちの方が辛い」

「冗談ですよね」

「冗談じゃねえよ。救外の仕事には中毒性があるらしいから」

「……救外に行きたくなくなってきました。楽しみにしてたのに」

約半年後には救急外来の当直が始まる。

最初は指導医とペアで夜中の一時までの勤務になるのだけど、救急外来は仕事中毒みたいな先生が多いと聞いていた。

まさか本当だったとは。

「何言ってんだよ、お前が志望してる外科だってそうじゃねーか。術後のハイな状態でセックスは最高だってさ。ハマるなよ」

「なにいってるんですか!」

この人は、体調が悪いくらいがちょうどいいらしい。

フンと顔を背けると、ドアポケットに入っている製薬会社の封筒を見付けた。

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