恋のカルテ
「へえー、それで佐伯先生に弁当押し付けて逃げてきたんだ」
「そう、逃げてきたの」
昼休みの食堂で、久しぶりに顔を合わせた森くんに、私は今朝の出来事を話した。
これ以上自分の胸にとどめておくと、仕事に支障が出そうだったから。
午前中は何度、あの場面がフラッシュバックしただろう。
「誰にも言わないでよね」
「言わないよ。だから、そのカツもう一切れ頂戴」
私の返事を待つことなく、森くんの箸は私のお弁当箱へとダイブする。
昨日作っておいたものを朝揚げて、お弁当のおかずにした。
肉の中にはシソとチーズがはさんであって、自分で言うのもなんだけど、すごくおいしい。
「うん、旨い。今頃、佐伯先生も食べてるかな」
「どうだろ。捨てちゃったんじゃないの? こんなの食べてたら、松谷先生に怒られちゃうでしょ」
「なんでそんなこと言うのさ。二人の関係が恋人同士だって決まった訳じゃないのに」
「そうだけど。仮に恋人じゃなくても、深い関係には変わりないよ。松谷先生、朝陽って呼んでたし」
「同期だからだよ」
森くんは自信満々に言う。