恋のカルテ

いくら同期だからといって、女性が男性を下の名前で呼ぶものなんだろうか。普通はあり得ないように思う。

そしておそらく、五十嵐先生が言っていた女医というのは松谷先生のことだ。

元からどういう関係なのかは知らないが、私との関係が終わって手持無沙汰になった佐伯先生が仮眠室で松谷先生にせまった。そうしたら逃げられた。そんな所だろう。

「……やらしい。あの人、仮眠室ホテル代わりにしてるんだよ。信じられる?」

「いいじゃない、仮眠室だし」

「よくないの! もうほんと許せない」

男って、どいつもこいつも考えることはみんな同じ。

そう思ったら怒りが湧き上がる。森くんを睨みつける。

「何イライラしてるの」

「してないもん」

「そういうの、なんていうか知ってる?」

「なに?」

「嫉妬っていうんだよ」

「そうじゃないから。言ってなかったけど、私例の彼とヨリを戻したの」

「そうだったんだ。よかったね……でいいのかな?」

「もちろん。だから嫉妬するはずがないの!」

キッパリと否定してみたものの、この胸の焦げ付きはその言葉以外では説明が付かない。

本当は自分でもうすうす気づいていた。でも、それに気づかないふりをしていたかった。

なのに、どうして佐伯先生は、そうすることを許してくれないのだろうか。


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