恋のカルテ
勤務を終えると急いで家に帰り、化粧を直してスーツに着替える。
圭人は医院長を迎えに行っているので、私とは別行動。会食予定の料亭で待ち合わせることになっていた。
「あと三十分しかない」
私はタクシーを呼んだ。到着した車に乗り込むと、行き先を告げる。
「すみません、少し急いでもらえますか?」
「分かりました」
走り出すと直ぐ圭人にメールを送り、持って来た学会誌に目を通す。
「園部紀嗣。園部病院院長。専門は呼吸器内科」
失礼にならないように少しでも園部医院長の情報を頭に叩き込んでおこう。そう思っていたのに。
さっきしまったばかりのスマホが、バックの奥で忙しく振動を始める。
「もう、誰?」
無造作に手を指し入れスマホを掴む、そこに表示された名前に通話ボタンを押すのを躊躇ってしまった。