恋のカルテ
「佐伯先生」
握られていた手を振りほどいて、先生の元へと駆け寄った。
「加恋。父が目を覚ましたよ。主治医にも会えた。明日には安静も解かれるだろう。もう大丈夫だ」
「そうですか。よかった」
「帰ろう、加恋」
佑樹くんは病院の正面玄関まで私たちを見送ってくれる。
「じゃあな、佑樹。受験、上手くいくように祈ってる」
「ありがとう、兄さん。たまには家の方にも顔出してよね。二人で」
「ああ、そのうちにな」
マンションに戻ったのは、午後九時。
私たちは、途中で買ってきたテクアウトのイタリアンで夕食を済ませて順番にシャワーを浴びた後、一緒にベッドにもぐり込んだ。
「今日は付き合わせて悪かったな。みっともないとこ見せちまったし」
「いいえ、そんなことありませんよ」
不謹慎かもしれない。でも私は、何の迷いもなくご両親の所へ連れて行ってくれたことがとても嬉しかった。……なんていったら、重いだろうか。
「お父様、早く良くなるといいですね」
「ん、ああ。そうだな。……今日は疲れたよ。もう寝ようか」
「はい」
「おやすみ、加恋」
「おやすみなさい」
先生は私を背中から抱きしめると静かに寝息を立て始めた。