恋のカルテ

よく見ると、トロフィーの台座には、フォトコンテスト最優秀賞と刻まれている。

「すごい。……トキさん、やったね」

私はそう呟いて、専門誌を手に取った。

表紙の下の方には、追悼・鴇島肇特集と書かれている。

パラパラとページをめくっていると、トキさんの生前の作品が数十点解説付きで載っている。

そして最後にはあの桜の下でとった写真が見開きで掲載されていた。

「キレイ……でもこれ」

あの時、トキさんの後輩の人は『あのアングルなら誰だかわからない』と言っていたけれど、白衣姿で桜の木の下に立つ人物は誰がどう見ても私にみえる。

「もう、嘘つき。でも……」

あの時、あの人が小さな嘘をつかなかったら、トキさんの最後の作品がこうしてナンバーワンに選ばれることもなかったんだから。

「……ま、いいか」

そう呟いて、小さく笑った。

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