恋のカルテ
食事を終えて、部屋の掃除をすると、私はあの場所へ足を向けた。
今はもう、緑の葉に覆われた丘の上の桜の木。
私は木の下にかがんで、持ってきていたトロフィーを根元のくぼみにそっと置いた。
「トキさん、みてる? 本当におめでとう」
手を合わせて目を閉じると、ざわざわと風が吹き抜けて葉の生い茂った枝を揺らした。
「か……れん」
トキさん? ……なんて、そんなわけないか。
「加恋」
今度はそうハッキリと聞えて、私は立ち上がって振り返る。
すると、こんな田舎に来るのに場違いなスーツ姿で、その人はいた。
「やっと見つけた」
「…………どうし、て」
驚いてその場に立ち尽くした私を真っ直ぐに見つめて、一歩また一歩と近づいてくる。