恋のカルテ

目の前に立つと、「久しぶりだな」そういってニッと笑った。

「探したよ。……三年もかかっちまったけど」

「佐伯先生! どうしてここが分かったんですか?」

「どうしてだと思う? 誰もお前の居場所を教えてくれる人はいなかった。しかも、同期の友人にすら何も話さずに退職してしまったんだから……どうにも探しようがなかった」

先生は私を探してくれていた。

私が先生のマンションを出て数日後、兄の所へも行ったらしい。

先生は必死だったと。でも、私の居場所は決して教えなかったと。兄は電話でそう教えてくれた。

「もう見つけられないかもしれない。諦めかけた時、本屋で何気なく手に取った雑誌で加恋を見付けたんだ」

そういって佐伯先生がカバンから取り出したのは、トキさんの作品の特集が組まれているあの雑誌だった。

「この雑誌」

「オレは、写真になんて興味もないし、この雑誌を手に取ったのはただの偶然だった。きっとこれは、神様がくれた奇跡だと思った。だから、出版社に電話をして、この写真が撮られた場所を教えてもらったんだよ」

佐伯先生は私の腕を掴むと、強引に引き寄せる。

勢いよく先生の胸に顔を埋めた形になると、そのままきつく抱き締められた。

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