恋のカルテ
「ひとりで立てます」
いいながら立ち上がった私をみて先生は苦笑いを浮かべる。
「かわいげのない女だな」
「どうもすみません」
「棒読みであやまるなよ。……まあいいか。いくぞ」
先生は助手席のドアを閉めてロックをかけると、エレベータに向かって歩き出した。
私はその背中を追いかけて、ちょうど降りてきた箱に乗り込む。先生が鍵をかざすと静かに上昇を始め、やがてエレベータは十階で止まった。
間接照明がお洒落に照らすホテルのような共有スペース。
「ここだよ」
先生はフロアーに四つあるドアのひとつの前に立ち、鍵を開ける。