恋のカルテ
白いタイル張りの玄関には折畳みの自転車が置かれている。それが邪魔に感じないのは相当広いからだろう。
「おじゃまします」
遠慮がちに中へ入ると、モデルルームのようで生活感がない。
カウンターキッチンには高めのスツールが二脚。ガランとしたリビングには黒い皮のソファーとガラスのローテーブルが置かれ、毛足の長いラグが敷かれている。
「何もないんだよ、あまり帰らないから」
「そうなんですか」
「取りあえずそこに座ってて」
「あ、はい」
私はソファーの端に腰を下ろすと部屋の中を見渡した。
確かに何もない。でも、掃除の行き届いたきれいな部屋だ。
開けっ放しの引き戸の奥は寝室だろうか。大きなベッドが部屋の真ん中に鎮座しているのが見える。
「先生はどこへ行ったんだろう」
なかなか戻らない先生を待つ間、私はバックの中からスマホを取り出した。