恋のカルテ
そっと唇を開くと、先生は指を指し入れる。頬の内側を擦られると鈍い痛みが走り、思わず顔をしかめた。
「悪いな、痛かったか。頬の内側が切れているだけでもう出血はしていない。これならナート(縫う)する必要もないな。高原も消炎鎮痛剤ぐらい常備してるだろう?」
「はい、持ってます」
頓服で処方された消炎鎮痛剤は、急な頭痛や生理痛が重い時に飲めるので、ポーチに入れて持ち歩いていた。
「それを飲めば数日で完治するよ、大丈夫だ」
先生手袋を外しながら安心させるように言った。
「……そうですか。ありがとうございました」
本当なら自分で確かめれば済んだこと。でも、怖くてそれが出来なかった。だからそういわれてホッと胸をなで下ろす。
するとポロリと涙がこぼれた。
「……すみません」
「いや、いいよ。何か飲み物でも取ってくるから」
先生は私の頭をそっとなでるとキッチンへ向かった。