恋のカルテ
「この週末は半年ぶりの休みなんだよ、オレを休ませないと自分の首が飛ぶって診療科長にいわれてさ、ずいぶん勝手な言い分だよな。でも、だから今夜は飲んでもいい日なんだ……電話も鳴らない。呼び出されることもない」
おそらく先生は私に言ったのだろうけど、まるで自分に言い聞かせているみたいだった。
だから飲んでもいいんだ、と。
そうしないと不安なんだろう。私の父がそうだった。いつ呼び出されるかもしれない、そんな日常の中でお酒を飲むことはほとんどなかったから。
先生はキュッと栓を開け、ウイスキーで満たしたグラスを傾ける。
「高いらしいけど、あんまり旨いもんじゃないな」
無造作に置かれたグラスの中で、氷がカランと小気味よい音を立てた。