委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 えっ? 今、声がした?

 小さくかすれたような声だったけど、確かに相原君の声が聞こえた気がして私は顔を上げた。私の願望による、幻聴なのかなと思いながら。すると……


 相原君が、目を開いていた。

 天井を見つめるようで、見ていないようなうつろな目ではあるけど、相原君は、そのくっきりとした凛々しい目を、パッチリと開いていた。


「相原君!」


 私は相原君の顔を上からのぞき込むようにし、彼に声を掛けた。すると彼の、漆黒の2つの瞳が、ゆっくりと私の顔を捕らえた。のだけど……


「……誰?」


 えっ?

 相原君は、まるで怒ってでもいるような、冷たい目で私を見て「誰?」と言った。私が誰なのか、解らないらしい。相原君は頭を強く打ったそうだから、もしかすると……記憶喪失? そんな……せっかく意識が戻ったのに……

 いったんは止まっていた涙が、再び私の目を潤ませた。


「なんで泣くんだよ。……玲奈」

「えっ?」

「っていうか、なんで眼鏡掛けてんだよ?」

「相原君!」


 私は思わず相原君に抱き着き、彼の胸に顔をうずめた。相原君が私を覚えていてくれた事が、嬉しかったから。


「玲奈……」


 そんな私の頭を、相原君はポンポンと叩いた。“桐島さん”ではなく、“玲奈”と呼ばれる事に違和感があったけど、私を覚えてくれているだけで満足だった。


「玲奈、顔を上げてくれよ」


 私は、泣き顔の上に眼鏡を涙で曇らせた、たぶん不細工になってる顔を上げた。


「誰だよ?」


 また言われた。私の顔が不細工だから、相原君はそれをからかっているんだろうか。それとも、名前は憶えているけど、私が誰か本当は解ってないとか?


「相原君……?」

「だから……“相原”って誰だよ?」

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