委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「あの人なら、いかにもしそうな事だもの」

「そうでしょうか……」


 真琴さんはそう言うけど、私にはそう思えなかった。悠斗のお母さんは、ちょっと神経質で厳しそうな印象ではあったけど、嘘をつくような悪い人とは思えなかった。


「するわよ、あの人なら。お兄ちゃんの顔を変えたのも、あの人なのよ?」

「えっ?」

 顔を変えた、って……

「去年の事故で、確かにお兄ちゃんは顔を傷付けたわ。それを綺麗に治すために整形が必要だったのは確かかもしれない。でも、あんなに変える必要なんてなかったのよ。お母さんが、裏で手を回してやらせたに決まってる」

「そんな……」

「あの人はお父さんと離婚して苗字を変えて、お得意の催眠術と薬で、お兄ちゃんの性格まで変えようとした。最近のお兄ちゃんは元に戻ってたけど、少し前まではいつもボーッとしてたでしょ?」

 と言われ、私は思わず頷いていた。確かに、以前の相原君はそうだったから。


「精神安定剤か何かを飲まされてたのよ。不眠症の薬とか言われて」

 そんな事、現実にあるんだろうか。あるとしたら……

「そんなにお母さんは、悠斗さんを嫌ってたんですか?」

 という事だと思う。


「ん……ある意味そうだけど、基本的には正反対ね」

「…………?」

「お母さんは、お兄ちゃんを溺愛してたの。ところがお兄ちゃんは中学の頃から反抗的になって、思春期ってやつかな。高校生になってからはことごとく対立してた。だから、お兄ちゃんが記憶を失くしたのをいい事に、今までのお兄ちゃんをリセットして、新しく作り変えようとしたのよ。相原悠斗として……」

「あの、お父さんは……?」


 悠斗にはお父さんもいるはずなのに、一度も名前が出て来ないので聞いてみたのだけど……


「父はいないも同然なの。しょっちゅう残業やら出張やらで、今だって外国のどこかに出張中よ。一応連絡は取ったけど」


 そうなんだ……

 以前、悠斗はほとんど家族の話をしてくれなくて、もちろん私と合わせる事もしなかったけど、その理由がようやく解った気がする。

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