LOVE or DIE *恋愛短編集*
中に、まだ誰かいるのかもしれない。
そう思いながら恐る恐るコンビニの自動ドアをくぐった紗耶香だが、中に客は1人もいなかった。

では、一体誰に手を振ったのだろう。

「いらっしゃいませ」

声が聞こえ、そちらに顔を向ける。
当然ながらそこにはレジの店員がいて、彼女は姉と同い年くらいに見えた。
ふわふわの髪が揺れた。

キレイな人、だと思った。


―――佐野と話していたのは、あなたですか?―――


そんなこと、聞ける訳がない。


足早に牛乳を手に取り―――ついでに、遅くなった言い訳にと適当な雑誌を1冊掴んだ。

『立ち読みしてたら止まらなくなっちゃって、つい買っちゃった』
とでも言えば、少々の小言で済むだろう。


雑誌はティーン向けのファッション誌だった。
表紙の女の子が笑っている。



レジの店員に、少しだけ似ていた。

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