LOVE or DIE *恋愛短編集*
「明日から、ちゃんと、学校行く。母ちゃんにも、そう言っといて」

「・・・ダメよ、自分で言いなさい」

自分の役目は終わった、と、彩萌はそう判断した。

彼は学校に来るだろう。
そして、どうやら何が起こったのかを相談してくれる気はないらしい。

少しだけ淋しくも感じたが、もう、子供のころとは違う。
男の子なりの悩みがあり、自分には言いたくないことかもしれない。
女の子には頼りたくないという、プライドかもしれない。
そう自分に言い聞かせ、彩萌はゆっくり立ち上がった。


「悠太、明日は明日の風が吹くよ」

最後にそう言うと、悠太は一瞬戸惑ったような顔をしてから、かすかに笑った。

「サンキューな、彩萌」

「また明日」

静かに部屋を出た。
リビングで心配そうな顔をして待っていた悠太の母に、にっこり笑う。

「今日は、おいしいもの食べさせてあげてくださいね」

悠太の母は、無言で抱きついてきた。
彼女なりの感謝の意思表示かもしれない。
彩萌は黙ってその抱擁を受け止めた。
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