Fake love(1)~社長とヒミツの結婚契約書~
「瀬川…グロスが剥がれたみたい…塗り直していい?」


「いいですけど…」


瀬川は私をパウダールームに案内してくれた。


私はグロスを塗り直して、瀬川の元に戻る。



「ゴメンなさい…怜が待ってるよね」



「折角綺麗に塗られたグロスを剥がしたのはこの俺です。お嬢様が謝る必要はありませんよ」



「瀬川…お嬢様ではなく、紗耶香と呼んで」



「非常に烏滸がましいですが、これからは紗耶香と呼び捨てにさせていただきます」






「晴斗…」


「紗耶香」



互いに名前を呼び合いながらはにかんで苦笑した。


10年の月日を経て、手に入れた幸福は夢のようだった。


晴斗は私に掠めるようなキスを落とす。


「晴斗…またグロスが剥がれちゃうよ」


「大丈夫。俺が保証します。社長室に行くぞ。紗耶香」






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