キミと帰る道





聖羅ちゃんが引っ越して来てから、私は藤谷くんとひと言も話さなくなった。





そして〝聖羅ちゃんと藤谷くんが付き合ってる〟という噂も広がって来たんだ。





「聖羅ー?
どこで食べるの?」




「屋上行こう!」




「屋上? いいけど。
おーい、すず? 行くよー!」




優芽ちゃんと聖羅ちゃんの話をぼーっとしながら聞いて。




お弁当を持って、楽しそうに話すふたりについていく。




「それにしてもなんで屋上なわけ?」




「ふふふ、報告があるのっ」





報告…?
聖羅ちゃんは嬉しそうで、スキップをしそうな勢いで階段を上って行く。





「すず!
もーなんかぼーっとしすぎだよ?」




「へ! あ…ごめんねっ」





聖羅ちゃんは悪くない。
なにも悪くない。





だから、嫉妬なんかしちゃダメ。
こんなにもいい子を嫌いになっちゃダメ!





そう自分に言い聞かせながら、ふたりの隣を歩いていく。





< 63 / 228 >

この作品をシェア

pagetop