嫌われ者に恋をしました

「じゃあ、どこに出かけた?」

 性懲りもなく、また聞いてしまった。女々し過ぎる。もう聞くのはやめよう。

「……」

「ごめん、そんなの言いたくないね」

「い、いえ。……瀬川さんとはどこにも行ったことはありません」

「え?」

「外で会うと破滅するからって言われて……。だから、どこにも行きませんでした。実は私、男の人と二人で食事に一緒に行ったのも、課長が初めてでした……」

 雪菜はうつむいて言った。

「そう、だったんだ」

 食事は俺が初めて?瀬川とは行かなかったのか?外で会うと破滅するなんて、瀬川の勝手な言い分だ。どこにも行かなかったなんて……。

 その前は?この年になるまで食事すら誰とも行ったことなかったのか?

 人と関わることを怖れているとは聞いていたが、そこまでとは思わなかった。にわかには信じがたい。つまり、初めて付き合ったのは瀬川ということだろうか。

「……瀬川さんはうちに来るだけでしたから」

 家に来るだけ……。雪菜を家に閉じ込めて、自分の好きなようにしていたってことか。それって……。アイツ!アイツ!本当になんなんだよ。鬼畜なんてもんじゃない。

 雪菜は自分の置かれた状況をわかっていたんだろう。だから、資料室で自分のことを都合のいい女なんて言ったんだ。確かに、瀬川にとっては都合のいい女だったのかもしれない。

 聞いた俺がバカだった。さっきあんな嫌な思いをしたばかりなのに、瀬川のことなんて聞いた俺が、本当にバカだった。
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