嫌われ者に恋をしました

 ハンドルを握る手にギリッと力が入った。

「ごめん、変なこと聞いて」

「いえ」

「雪菜、これから二人でいろんな所に行こう?家にいるだけなんて、面白くないだろ」

「……はい」

 雪菜がじっと見ていることには気がついていたが、瀬川のことなんか聞いた自分が許せなくて、見つめ返してやれなかった。

「課長……、ずいぶん大きな車に乗っているんですね?」

「この車?」

「はい。なんて言うか、社用車よりも視線が高くて、すごく眺めがいいです」

「まあ、社用車よりは大きいし、車高も高いかもね。でもこの車、俺よりほとんど弟が乗ってるんだ」

 この車は俺が買いたくて買ったのではなく、弟の画策で買わされた気がする。無神経でマイペースな弟、悠人。俺達は全然似ていない。

「弟さんがいるんですね?他にご兄弟は?」

「いや、弟だけだよ。雪菜は?兄弟いるの?」

「いえ、いません」

 ということは、兄弟もいなくて両親も亡くなって、一人きりなのか。祖父母もいないんだろうか。雪菜の「一人」は本当に一人なんだ。

 だから、一人にしないでなんて言って泣いたんだろうか。そう思ったら、胸が痛くなった。
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