嫌われ者に恋をしました
今日の課長は、なぜか瀬川さんのことを聞きたがる。でもそれは、今日いろんなことがあったからかもしれない。
一日に2回も瀬川さんが目の前に現れるなんて。それも、あんな強引に。まさか、家の鍵を持っているとは思わなくて、怖くて怖くて、足がガクガク奮えて止まらなかった。
どうやって逃げ出したのかは覚えていない。逃げた時はもうわけがわからなくて、でも絶対に逃げ切りたくてがむしゃらに走った。
走っている間は、息切れする自分の呼吸が耳のそばに聞こえて、なんだかすごく視界が狭くて、筒の中から景色を見ているようだった。
アパートの下の砂利と、途中で踏んだ小石がものすごく痛かったけれど、そんなことを気にする余裕もなかった。
たまたま目に入った明るいコンビニに駆け込んだ時、助けてもらえなかったらどうなっていたんだろう。あのおじさんとおばさんには感謝してもしきれない。
瀬川さんはまた来ると思う。どうして急にまた私をターゲットにしたのかはわからない。でも昔、狙った獲物は逃さないと言っていた。だから課長が、そばにいるから大丈夫と言ってくれた時、ほっとして力が抜けた。
課長と連絡が取れてコンビニまで来てくれた時、最初は近づいて来た人が誰なのかわからなかった。スポーツでもやっていそうな爽やかな好青年に肩を掴まれてびっくりしたが、よく見たら課長だった。