嫌われ者に恋をしました

 隼人の作った熱々のパスタはとても美味しかった。

「すごく美味しいです!調味料って何を使ってるんですか?」

「秘密」

「そんなあ」

「知りたい?」

「はい」

「しょうがないなー。って、そんなたいしたものは入れてないよ。塩こしょうの他はコンソメとワインかな」

「私も時々パスタにコンソメ使います!」

「うん、入れるとうまいよね」

 そう言って二人でふふっと笑った。

 ああ、怖いくらい幸せ。こんなに幸せでいいんだろうか。この幸せが逃げていってしまいそうで怖い。

 雪菜がふっと表情を曇らせたことに気がついて、隼人が覗きこんだ。

「どうかした?」

「……ちょっと怖くなって」

「怖い?」

「……幸せすぎて、怖い」

「幸せなのに怖いの?」

 雪菜はうつむいた。

「いつかこの幸せが逃げていってしまうみたいで、怖いんです」

「逃げていかないよ、ずっと一緒にいる」

 隼人は雪菜の手を握った。

「食べ終わったら雪菜の話を聞きたいな」

「え?」

「雪菜のこと、知りたいんだ」

「私のこと?」

「うん。もちろん無理にとは言わないよ。別に今日じゃなくてもいいんだ。話す気になったらでいいよ」

 それはきっと、子どもの頃の話を言っているんだろう。そんなの、人に話したことなんかない。でも、大きな手に包まれているのを感じながら、隼人になら心を開いて話せるような気がした。

「いえ、大丈夫です。お話しします」

 雪菜は隼人に握られた手をじっと見つめて答えた。
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