嫌われ者に恋をしました

 リビングに入ると、奥のソファで新聞を読んでいた父親が隼人をチラッと見ると「おう」と一言発した。変わらぬ存在感の薄さ。この家は変わっていない。

 母親に誘導されてダイニングテーブルの席についたが、母親は座った途端に喋り始めた。

「もうっ!またあの女みたいなの連れて来たら負けらんないと思って、見栄張って特上寿司頼んじゃったわよ!」

「なんだよ、それ」

 さっそく始まってしまった。隼人が心配して雪菜を見ると、雪菜は話の内容を理解する努力をしているようで、一生懸命母親の話に耳を傾けていた。

「母ちゃん、あの人嫌いだったもんね~」

「今も嫌いよ!人のこと見下して!ホント嫁に来なくて良かった」

「やめてくんない、もうその話。そんなことより、紹介させてよ」

「あらっ!そうよね。ごめんなさい」

 母親が調子良くニッコリ笑ったから、隼人は雪菜を紹介した。

「俺の彼女の、小泉雪菜さん」

「よ、よろしくお願いいたします」

 雪菜は深々と頭を下げた。

「俺の母親と弟。奥にいるのが父親」

「弟の悠人です~、よろしくね」

「はい、よろしくお願いいたします」

「そんな堅苦しくなくていいわよ。雪菜さん?かわいい名前ねえ。おいくつ?」

「いきなり歳聞くかよ!」

「いいじゃない」

「えっと、27です」

「あら、そうなの?ちょうどいいじゃないの。二十歳そこそこかと思っちゃったわ!未成年だったらさすがに指摘しようと思ったんだけど、良かったわあ」

「んなわけねーだろ!」
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